ドラマ『最高のオバハン 中島ハルコ』をもっと楽しめるWEBマガジン

#food

「ロバのパン」令和に復活!

2021.03.31

昭和の時代に、独特のメロディにのせて馬車でパンを売り歩いた「ロバのパン」は、手作りの蒸しパンが当時の子供達に大人気でした。
最近、名古屋でそのロバのパンの目撃情報が相次いでいます。なぜ今、ロバのパンが復活したのか調査しました。

■昭和の終わりに姿を消した移動販売「ロバのパン」が令和の時代に復活

 名古屋で街の人に、ロバのパンについて聞いてみると...。

女性:
「小さい時に(近所に)売りに来た」

別の女性:
「音楽鳴らして来てくれて、親にねだってよく買ってもらいました」

 時代は昭和。ロバのパンは最盛期には、全国に170もの代理店を構えるなど一世を風靡しましたが、車社会の到来とともに交通の妨げになるといった理由で次第に減り、昭和の終わりには姿を消しました。

女性:
「たまに見ますよ。ロバのパンって書いてある軽(自動車)で来ていたから」


 そんなロバのパンが、名古屋で復活しているという情報が...。夕方、見かけたという付近を探してみると、名古屋駅のすぐ近くで発見。「ロバのパン普及宣伝車」と書かれた自動車が、当時の曲を流しながらパンの販売をしていました。

 荷台に陳列されたパンは、全て「蒸しパン」。「あんパン」や「レーズンパン」などの懐かしの味から、「カスタードクリームパン」まで全部で8種類。値段は全て1個200円です。

ロバのパンのスタッフ:
「ロバのパン名物です。昔からあるので『懐かしい』って言ってくれます」

 昔も今も1番人気がピンクの「チョコレートパン」(200円)です。生地はフワフワモチモチで、甘さ控えめな優しい味。チョコレートはパンの下の方にたっぷり詰まっています。

■移動販売がコロナの時代にフィット...都市部から住宅街まで「蒸しパン」求め客殺到

 この日、ここでの販売は2回目。昼には約80個売れたといいます。

購入した女子学生:
「学校の帰り、今日2回目で。めっちゃ美味しいから。前々から、ロバのパンが有名って聞いていて」


 ロバのパンはコロナの拡大後、毎日2〜3台の移動販売車が名古屋を回っています。都市部だけでなく住宅地も回っていて、この日は北区の上飯田にも。こちらは名駅より少し年齢層が高いようです。

購入した女性:
「初めてです。(車が)カワイイなと思って」

別の購入した女性:
「たまたま通りすがって、遠くから音楽が聞こえるから...」


 購入した多くの人は「懐かしい」というより、新しいパンという認識のよう。夕方、日が落ちても続々と人が集まり、この日は305個のパンが売れました。

ロバのパンのスタッフ:
「住宅街をよく回るので、お家の前とかで『ありがとう』と言ってくれることもある」


 外出を控えている人が多い今、"移動販売"であることが、コロナの時代にフィットしています。

■「ロバのパンをもう1回食べたい」...創業者の地元・岐阜で声高まり復活

 なぜ、今ロバのパンが復活したのか。パンを製造している岐阜市にある工場に向かうと、建物の前には移動販売車がずらっと並んでいました。

 ロバのパンの材料は、小麦粉、砂糖、米油と、秘伝のベーキングパウダー。保存料などは一切使わず、1つ1つ手作りしています。

 もっちりと仕上がるよう、木のせいろで蒸しあげる昔ながらの製法で、1日に約1200個製造しています。ところで、なぜパンに色が着いているのでしょうか。

一恵庵ロバのパン工房の渡辺社長:
「(当時は)ショーケースの中は、電気もなく暗かったんです。綺麗な色を付けて明るく見せた、その名残ですね」

 カラフルな色合いにも意味がありました。しかし、なぜ今ロバのパをン復活させたのでしょうか。

渡辺社長:
「元々、義理の母がロバのパンの代理店をやっていまして。それから2〜30年経って、周りから『ロバのパンがもう1回食べたい』っていう声が聞かれるようになったんです」


 ロバのパンの創業者の桑原貞吉さんは、岐阜県揖斐川町の出身。全国にパンの代理店はありましたが、創業者の地元・岐阜での販売には、特に力を入れていました。

 ロバのパンは、昭和の終わりに姿を消しましたが、地元・岐阜の人たちには未だ愛着が強く、ゆかりのパンを「もう一度食べたい」という声が、根強く残っていました。

 その声が渡辺社長の背中を押し、10年前にロバのパンは復活しました。復活後、岐阜県内を中心に販売を開始。最近は移動販売の需要がより高まったため、名古屋にもやって来るようになりました。

■社員30名分まとめ買いする人も...コロナ禍でランチタイムに企業から依頼が

 今、そんなロバのパンに企業から、「外でのランチを控えている社員のために」と多くの依頼が入ってきます。

ランチにパンを購入した女性:
「社員がちょうど30名いるので30名分を...」

同・男性:
「懐かしいですね、小さい頃(よく食べた)。子供に食べさせようかなと思って」

同・別の男性:
「昔はロバが来て(フンを)ポトポトポトってして行きよったもんだよね、本当に懐かしい」


 思い出の味を求める年配の人から、カラフルな"映えるパン"として買い求める若者まで。ロバのパンは、古くて新しい東海地方の名物となっています。

 ロバのパンの渡辺社長は、「岐阜がルーツのパンですので、皆さんに後世に語り継いでいただきたい」と話しています。

※このニュースは東海テレビ夕方の報道番組「ニュースOne」で放送されました。
https://www.tokai-tv.com/newsone/

oneBnr.jpg